遺産相続で知っておくべき4つの時効とは?代襲相続が起きたときの注意点も解説


法律問題に時効は必ずと言っていいほどつきまといます。遺産相続についても例外ではありません。時効とは、法律上正当でないと認められる場合も、過ぎれば認める制度のこと、関係者の人生を左右することもあります。

また、本来相続人になるべき人が亡くなっている状況は、相続関係が複雑になるかもしれません。面識がない親族との遺産分割協議、残された者のストレスになる可能性は非常に高いです。

この記事では、遺産相続に関連する時効や代襲相続についてわかりやすく解説します。

遺産相続に関する4つの時効


相続発生後、何も手続きを行わなければ、時効を迎え権利を失う場合があります。それにはどのようなものがあるのでしょうか?

遺産放棄の時効

遺産の受取りを放棄できる権利に時効があります。相続放棄をする場合は、相続人と知り得た日から3カ月以内に家庭裁判所へ申立てなければいけません。

この時効を迎えると、相続をする意思があると取られます。

ただし、家庭裁判所が認めるようなやむを得ない事情がある場合は、3カ月を過ぎても放棄と認められる可能性も僅かなにあります。

時効が過ぎた場合でも遺産放棄をしたい場合は、一度弁護士に相談をすることがおすすめです。逆に同じ相続人に対して遺産分割協議を行う、遺産分割請求権に時効はありません。

数年経とうが権利が失われることはなく、遺産分割をしないまま亡くなったとしても、その相続人が遺産分割請求権を相続していきます。

遺留分侵害額請求の時効

遺留分侵害額請求にも時効があります。遺留分侵害額請求とは、被相続人の遺言から法定相続人であるにも関わらず、何も相続できない、もしくは相続が少ない内容において、遺留分を請求し最低限の遺産を得るための手段です。

遺留分侵害額請求の時効は、2つの期間を定めています。
・相続が開始した時から10年の経過
・遺贈や贈与があったと知った日から1年の経過
遺留分がある相続人が時効を迎えると、今後一切その請求はできません。気がかりがある相続人は、早めに行動を起こすようにしましょう。

不明な点があるときは、弁護士に相談をするべきです。

また逆の立場の相続人は、時効が迎える前に遺留分侵害額請求を受けると支払わなければいけません。すでに遺産を使いきった人は、自分の財産を失ってでも支払う必要があります。

相続税の時効

遺産が一定以上の場合は、相続税の課税対象になることを忘れてはいけません。

相続税は相続を開始した翌日から10カ月以内が法定申告期限、相続税の時効は、この法定申告期限を迎えた日から5年、悪意がある場合は7年です。

時効があるからと言って、放っておくのは問題です。必ず税務署の調査で発覚するので、期限までに納税を行ってください。

相続回復請求権の時効

相続回復請求権とは、被相続人の遺産を相続する権利を持っている相続人が、その権利を侵害された場合に、権利の返還や回復を行える権利です。

相続回復請求権を持つ人は、真正相続人、包括承継人、相続分の譲受人などが該当します。

相続回復請求権の時効には、次の2つの期間を定めています。
・相続権を侵害されたことを知った日から5年の経過
・相続開始時から20年の経過
これら2つの期間内に申立てなければ、時効の成立です。

一般的に相続回復請求権は、相続権がないにも関わらず相続権を主張してくるものに対し、権利を侵害されている相続人が財産の回復を求める権利として利用されています。

代襲相続とは?


代襲相続とは、被相続人が亡くなる前に、本来相続人になる人が亡くなっている場合において、その子などが相続権を受け継ぐことを言います。

本来の法定相続人は、被相続人から見て「配偶者」「子」「親」「兄弟姉妹」のみです。被相続人よりも先に亡くなっていた場合は、代襲相続が起きるかもしれません。

相続の順位と代襲相続

被相続人に法律上の配偶者がいれば、常に相続人です。また、被相続人よりも先に亡くなっていても代襲相続は起きません。

配偶者以外は、第1順位から第3順位までの順位が定められており、被相続人が亡くなった後、上位の関係で生存している者から順番に相続人としての権利を得られます。

例えば第1順位の相続人が健在ならば、第2順位以下は相続人の権利を有しません。

第1順位と代襲相続

被相続人から見て、子にあたる者が第1順位の相続人です。被相続人が亡くなったとき、子がいれば、第2順位以下の者は相続権を得られません。

代襲相続は、被相続人が亡くなるよりも前に実子が亡くなっている状況で、その実子にさらに子(被相続人から見た孫)がいるときに起きます。

この場合、実子の子である孫が代襲相続人です。被相続人に、ほかの実子がおらず、孫もいなければ第2順位へ相続権は移ります。また、孫が2人いれば両人ともに代襲相続人です。

あまりあり得ないことですが、被相続人から見て実子と孫が亡くなっており、ひ孫がいれば、そのひ孫が代襲相続人となります。

例:配偶者、実子2人の内1人が死亡、孫が2人いる場合の相続割合
配偶者…2分の1
実子…4分の1
孫…それぞれ8分の1ずつ
本来、実子が相続するはずだった相続割合を、孫の人数で振り分けられます。

第2順位と代襲相続

被相続人に実子がいなければ、第2順位の父母が配偶者とともに相続人です。

万が一、被相続人から見て父母が亡くなっている場合で、祖父母が健在ならば相続権は祖父母が有します。ただし民法上、この場合においては代襲相続ではありません。

第3順位と代襲相続

第1順位、第2順位ともにいない場合は、第3順位である被相続人の兄弟姉妹と配偶者が相続人です。

もし、兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっている場合、その兄弟に子(被相続人から見た甥姪)がいれば代襲相続人となります。

ただし、先ほどの第1順位と異なり、甥姪も死亡している場合は、その子に代襲相続されることはありません。

代襲相続の注意点


次に代襲相続の注意点についての解説です。

相続放棄では代襲相続できない

相続放棄を行った相続人は、その相続において最初から存在しない者として扱われます。そのため、相続放棄を行った者に子がいても代襲相続はできません。

代襲相続と再転相続

代襲相続に似たものに、再転相続があります。再転相続とは、被相続人が亡くなった後、遺産分割を完了する前にその相続人が亡くなることです。

今回の代襲相続は、被相続人が亡くなる以前に相続人になり得る人が亡くなっている状況を言います。似ておりますが、だいぶ違うので間違えないよう注意をしてください。

相続が複雑になる

代襲相続が起きると、面識のない人と遺産分割協議を行う、相続人の人数が増えるなど面倒になることが予想されます。書類の準備もそうです。代襲相続を証明するため、用意する戸籍謄本も増えてきます。

まとめ

相続に関する時効を正しく理解しておかなければ、後悔を生むかもしれません。支払う必要のない借金を相続したり、本来受け継がれるはずの遺産がもらえない恐れもあります。

また、代襲相続が発生すると面識のない人と相続不動産の取り扱いについて話し合わなければならず、権利関係もより複雑になってしまう恐れがあります。

相続に関する時効や代襲相続について不安や疑問があれば、遺産相続に強い弁護士が在籍している仙台の豊田法律事務所のような専門家に相談することも検討しましょう。

公開日: