相続分譲渡とは?利用するメリットとデメリット
まさかここまで遺産分割協議で揉めるとは、あれだけ仲の良かった親族に意外な一面があると驚く相続人もいることでしょう。早くこのような場から去りたいと思うことは、遺産分割協議では珍しくありません。
もし本当につらいのならば相続分譲渡を考えてみてはいかがでしょうか。今回の記事では、相続分譲渡について詳しく解説していきます。メリットとデメリットから利用するかを検討してください。
相続分譲渡とは?
相続分譲渡とは、自分が有している相続権を他の相続人、もしくは第三者へ譲渡することです。遺産だけの譲渡と見られる人もいますが、相続人の地位そのものを譲渡します。
第三者への譲渡
相続人だけでなく、第三者へ譲渡への譲渡も可能です。法人や団体への譲渡でも可能ですが、利用される人のほとんどが他の相続人へ譲渡するケースです。また相続の一部や、複数人へ分けての譲渡もできます。
また、第三者へ譲渡された相続権は、ほかの相続人がその価格および費用を償還し取り戻すこともできます。この権利を相続分の取戻権と言い、第三者が申出を受けたときには、これを拒むことはできません。また取戻権は、譲渡を知り得てから1カ月以内の行使が必要です。
相続分譲渡に他の相続人の合意はいらない
取戻権があることからも分かりますが、相続権譲渡に関し他の相続人の合意は必要ありません。譲渡人と譲受人の合意のみで成立します。
遺言書による相続も譲渡できる
遺言書による指定相続分についても、相続分譲渡は可能です。遺言書によりすべての遺産の指定相続人になった者が争いを避けるため、ほかの親族へ平等に譲渡をしてもかまいません。
相続分譲渡は有償と無償どちらでも可能
相続分譲渡は、有償でも無償でもどちらでも行うことができます。ただし有償で行った場合は、その金額に応じ相続税が発生し、譲受人は、有償分の相続税が減少します。
相続分譲渡のメリットとデメリット
次に、相続分譲渡のメリットとデメリットを確認しておきましょう。
相続分譲渡のメリット
相続分譲渡のメリットは、遺産分割協議でもめた際に、自分の相続分を別の者に譲渡することで争族を回避できる点です。遺産分割協議で予想以上に揉めると、仕事への影響が出始めるかもしれません。それはあまりにも不本意です。もし遺産分割協議が面倒ならば、ほかの相続人にある程度の有償で譲渡す方が、無難の選択かもしれません。
また、相続放棄と違い家庭裁判所での手続きを必要としません。そのため手間をかけずに行えるメリットも持ち合わせています。
相続分譲渡のデメリット
相続分譲渡のデメリットは、被相続人の負債です。たとえ相続分譲渡をしても、被相続人の債務者から返済を求められた場合は、免れることはできません。被相続人の債務者に、相続分譲渡は関係のないことです。
もちろん譲渡をしたことを理由に、譲受人へ請求してくれと説明し、そこで支払いがされれば問題ありませんが、支払いがなければ再度請求をしてくることでしょう。
被相続人にマイナスの遺産がある場合は、相続分譲渡ではなく、相続放棄を選択する方が無難です。
第三者への相続分譲渡は危険
第三者へ相続分譲渡を行うのは危険です。譲受人は、相続権を手にしたことから遺産分割協議へ参加もできます。ほかの相続人にとって迷惑な話です。争族の火種になる可能性も秘めていることから、できるだけ避けるようにしてください。
万が一、被相続人の債務が見つかった場合は自分もつらい思いをします。もし相続分譲渡を検討しているのならば、一度弁護士に相談をしてからにしましょう。プラスの遺産を失い、債務だけ引き受ける状況は目も当てられません。
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